たひお備忘録

趣味の活動記録。
【タイトル題字:細身のシャイボーイ様】

JR烏山線乗車記 【令和2年12月】

宝積寺駅に停車中の烏山行き普通列車

 12月の某日。色々あって仕事を昼過ぎで上がった後、ふと思い立って烏山線に乗ることに。


 烏山線は、宝積寺駅を起点に、終点の烏山駅までの間、20.5kmを結ぶ路線で、起点駅と終点駅を含む駅数は8。全線単線で、宝積寺駅の構内と烏山駅の構内のみ電化されています。
 その歴史ですが、明治時代から宝積寺駅と烏山を結ぶ人車鉄道や軽便鉄道は構想や計画されていたものの、色々あって大正10年(1921年)まで着工は遅れ、大正12年(1923年)2月、鉄道省路線として宝積寺駅-烏山駅間20.4kmが開業。ちなみに当時、途中駅は熟田駅(現在の仁井田駅)と大金駅しかありませんでした。
 その後、途中駅が新設されたり、旅客列車に気動車が導入されたり、また戦後は鉄道省から日本国有鉄道(国鉄)に所管が変わったりしてきたのですが、昭和43年(1968年)に国鉄諮問委員会が、鉄道路線としての使命を終えたとして「赤字83線」に認定。しかし、営業収支が近傍の路線と比較して良かっためか廃止を免れ、国鉄末期の国鉄再建法による赤字路線の廃止の際にも、対象の特定地方交通線には指定はされませんでした。
 そしてJR東日本に移管された後、平成の半ば頃からハイブリッド気動車やそれを改造した蓄電池電車の実験にも使われるようになり、その成果を活かした蓄電池電車、EV-E301系電車、愛称「ACCUM(アキュム)」を平成26年(2014年)3月から一部列車に導入。平成29年(2017年)3月からは全列車に使用されています。

 また、烏山線は、宝積寺駅や大金駅という縁起の良い名前を持つ駅があるということで、国鉄末期、宝積寺駅-大金駅の記念乗車券が発売された記憶がある(っていうか持っていた)のですが、その後、鴻野山駅-烏山駅の烏山線所属駅が7駅ということから、各駅ごとに七福神を1柱づつ割り当てて、列車にはそのイラストを書いて運行していた時期もあったな、と。

 それで宇都宮で生まれ、烏山線の起点となる宝積寺駅の一つ北にある氏家駅からほど近い所で育った私にとって、烏山線というのは、個人的に一番身近なローカル線でした。
 確かまだ小学校に入るか入らないかの頃、祖母に連れられて烏山まで往復したことは、個人的に覚えている鉄道に関する記憶の中でも相当に古いものですし、その後、小学校6年制くらいの時に友達の間で突如烏山線(というか滝駅)がブームとなって、何度か乗りに行ったりしたことも。
 ですが長じるにつれ疎遠となり、前回乗ったのはおよそ四半世紀も前のこと。その時も、仕事を途中で上がって、そのまま乗りに行った覚えがあるのですが、今回は仕事を途中で上がったところまでは同じだったものの、クルマで用足しを済ませた後、宝積寺駅まで行き、駅東口に隣接している町営駐車場にクルマを停めました。
 ちなみにこの東口。かつては駅出入口はなく、常に貨車が停まっていた側線が何本かあった記憶があるのですが、側線はいつの間にか無くなってしまい、商業施設と同時期に東口が整備されたかと。

【宝積寺駅の駅舎】
宝積寺駅の駅舎

 宝積寺駅は、かつては隣の氏家駅などと同様の、国鉄時代を偲ばせる木造の駅舎だったのですが、現在のは平成19年(2007年)から使用開始された、モダンな橋上駅舎。設計は駅東口の商業施設と同様、なんとあの隈研吾氏です。

【改札口付近】
改札口付近

 これから乗る烏山線は、SuicaなどのIC乗車券が使用できないため、券売機で切符を購入。ちなみに宝積寺駅から烏山駅までの運賃は、420円でした。

【宝積寺駅の駅名標】
宝積寺駅の駅名標
【宝積寺駅構内の架線】
宝積寺駅構内の架線

 烏山線の列車は、すべて3番線から発着。よって3番線側の駅名標は、下り側の駅名が東北本線の氏家駅と併記ではなく、烏山線の下野花岡駅だけ書かれていました。
 またそれよりも特徴的なのが、架線。後述する烏山線の車両は停車中に充電を行うため、それに対応しているのでしょうか?列車が停車してパンダグラフが接するであろう部分の架線の構造が、通常のものとは変わっていました。

【宝積寺駅に入ってくる烏山行き普通列車】
宝積寺駅に入ってくる烏山行き普通列車

 やがて14時47分頃、宇都宮駅からの烏山行き普通列車が入線。烏山線の列車は、大部分が東北本線(愛称:宇都宮線)に乗り入れて宇都宮駅発着で運転されています。
 ちなみに国鉄末期だかJR初期だかに、ほぼ?全列車、東北本線乗り入れを止めて宝積寺駅発着で運転された時もあったのですが、不評のため再び宇都宮駅発着に戻されたという経緯があったような。

 列車に乗り込んだところ、ロングシートの車内は2両とも椅子がかなり埋まってる状態。その内訳は、高校生と老人が殆どで、典型的ローカル線の旅客構成という感じです。もっとも当地では、私の祖父母(大正生まれ)の世代ならいざしらず、いわゆる団塊の世代以降は皆自動車運転免許を持ち、高齢になっても運転を続けている印象があるんですがね。
 と、話がそれましたが、席はあまり空いていないものの、幸いなことに運転席直後の特等席が空いていたので、走行中というか、駅の間はそこに立って前方の景色を眺めることに。

 それでこの列車に使われている車両が、先述のとおり烏山線のみで運用れている「ACCUM(アキュム)」ことEV-E301系という形式の電車。

 烏山線は開業後から長らく非電化路線で、旅客列車に関して言えば比較的早い時期に気動車化されていたのですが、烏山線について述べたところでちょっと触れたように、平成26年(2014年)にから導入された蓄電池電車で、宇都宮駅-宝積寺駅間の東北本線乗り入れ区間はパンタグラフで架線から集電した電気を走行用のモーターの駆動に使うと共に、リチウムイオン蓄電池に充電。また宝積寺駅停車中、烏山駅停車中も蓄電池の充電を行い、烏山線内は蓄電池の電気を使用して走行するというもの。ちなみに、国内では蓄電池車自体が珍しく、特に昭和の頃はごく一部が実用化されただけでしたが、近年のパワーエレクトロニクス技術の向上に伴って次々に実用化され、現在ではJR東日本の男鹿線や、JR九州の筑豊本線で営業運転を開始した他、各社で実験も行われています。
 と、走行装置に関してはわりと革新的な車両なのですが、車体の方は標準的で、客用の両開き扉を片側3箇所に設置した20m級の車体に、車内はオールロングシート。ちなみに車内灯はすべてLEDだそうで。で、2号車となる烏山方のEV-E301形と、1号車となる宝積寺方のEV-E300形が、2両固定編成を組んでいます。

【宝積寺駅発車直後】
宝積寺駅発車直後

 程なくして定刻の14時49分となり、「ドアが閉まります」と宇都宮線でも聞き慣れた女性の声の後、これまた聞き慣れた「ピンポンピンポン」というチャイムと共に扉が閉まって発車。長らく烏山線=ディーゼルカーだったので、インバータ制御のモーター音を響かせながら加速していくのはとても違和感があるのですが、この列車が導入された6年前からは、これが当たり前だったんですね。

【宝積寺駅-下野花岡駅間】
宝積寺駅-下野花岡駅間(1)
宝積寺駅-下野花岡駅間(2)
宝積寺駅-下野花岡駅間(3)

 運転席からは「架線なし区間に入ります。」という女性の自動で流れる音声が聞こえ、実際に架線のない区間に入った列車は、すぐに右にカーブをして掘割の中を下り、駅のあった台地から標高にして15m以上降りていきます。そしてここから先、暫くの間は関東平野の北端部に近い田園地帯を走行。ちなみにこのあたりは高根沢町の行政区域内ですが、確か高根沢町の町歌の歌詞に「たんたん田んぼの高根沢」というのがあったかと。
 で、田んぼの中にある踏切では、列車の通過を待つクルマの姿が。個人的に、このあたりは数え切れないくらいクルマで走っているのですが、列車本数の少ない烏山線の踏切で引っかかると、えらく損した気分になるんですよね。

【下野花岡駅進入】
下野花岡駅進入
【下野花岡駅-仁井田駅間】
下野花岡駅-仁井田駅間
【仁井田駅進入】
仁井田駅進入

 宝積寺駅を出て約5分で、最初の停車駅である下野花岡駅に停車。(ホーム)1面(線路)1線の無人駅です。
 そこを乗り降り無しで発車し、水田と点在する農家住宅の中を走ること約3分で、仁井田駅に到着。かつては交換可能駅で、子供の頃はキリンビール栃木工場への専用線が分岐し、貨車も停車していた広い構内だった記憶があるのですが、専用線もだいぶ昔に廃止となり、キリンビール栃木工場も10年ほど前に閉鎖となって、現在ではここも1面1線の無人駅に。ただ、駅周辺に人口が比較的集まっているところではあるためか、午後3時近い時間帯でも5,6人が下車していきました。

【仁井田駅-鴻野山駅間】
仁井田駅-鴻野山駅間(1)
仁井田駅-鴻野山駅間(2)
仁井田駅-鴻野山駅間(3)

 仁井田駅を出た列車は、これまでの平地から、低い山の中へと。ここから終点の烏山駅までは、八溝山地の中を走ります。そして自治体も高根沢町から那須烏山市へと変わり、ひと山越えたところで鴻野山駅に停車。ここも1面1線の無人駅で、かつては木造の待合室があったこと、その待合室がだいぶ前に火災で燃えてしまったことなどが記憶にあるの(といってもうろ覚えで、本当だったかだいぶ怪しいんですがね。)ですが、現在まで待合室は再建されない代わりか、ホームには新しめの屋根が掛けられていました。
 で、その鴻野山駅で4人ほど下車。乗ってくる人はいません。

【鴻野山駅-大金駅間】
鴻野山駅-大金駅間(1)
鴻野山駅-大金駅間(2)
鴻野山駅-大金駅間(3)
【大金駅停車中】
大金駅停車中

 鴻野山駅で出た列車は、再び山の中へ。仁井田駅までの直線が多かったところに比べると、心なしかカーブも多く。日陰には、数日前に降った雪が残っています。
 で、このあたり、烏山線の車窓からだと、山と狭い農地が目に入り、かなり鄙びているように見えますが、並走する栃木県道10号宇都宮烏山線の沿線は、わりと人家が多く、沿線には山を削って開発された住宅地もあったりします。
 そんな冬枯れの景色の中を進むこと暫し。またひと山越えたところで、大金駅に到着。現在では線内唯一の交換可能駅となってしまいました。で、ここは烏山線が通過する那須烏山市のうち、旧南那須町の中心部だったところ。なので結構な乗降があるかなと予想していたのですが、3人降りて1人乗るのみで発車。

【大金駅-小塙駅間】
大金駅-小塙駅間(1)
大金駅-小塙駅間(2)
大金駅-小塙駅間(3)

 大金駅を発車した列車は再び山あいへと。冬の陽が傾き、場所によっては薄暗い中を走ります。
 それで大金駅を発車して1kmも行かないあたりで先述の栃木県道10号宇都宮烏山線と交差するのですが、その付近の川沿いの崖地が、「大金クジラ」の発見地。今でこそ「海無し県」の栃木県ですが、このあたり1000万年前は海の底だったそうで、昭和53年(1978年)、県道のバイパス工事の際、クジラの化石が発見されたました。(当時はわりとニュースになった記憶があります)もっとも、車窓からはそれとわかるところは見えず、その化石が発見された川である荒川を渡ると小塙駅に到着。1面1線の無人駅で、2人ほど降ろしてから発車しました。

【小塙駅-滝駅間】
小塙駅-滝駅間(1)
小塙駅-滝駅間(2)
小塙駅-滝駅間(3)
【滝駅停車】
滝駅停車

 小塙駅を発車した列車は、すぐに25‰の登り勾配に。ここが烏山線で一番山深い区間でしょうか。線内で唯一のトンネルもあります。そしてそのトンネルを抜け、江川を渡ると停車するのが滝駅。駅から歩いてすぐのところに龍門の滝という名所があります。
 それでこの滝駅と龍門の滝、最初は確か、当時流行っていた魚釣りのために訪れたのですが、釣りそっちのけで水量の少ない滝によじ登ったり、滝の上を走る烏山線を眺めたり、そして滝駅の待合室に書かれた数々の落書きを読むのが何故か楽しくなって、何度か来たんですよね。
 そんな思い出の滝駅では1人が下車。当時の木造の待合室は既に無く、この烏山線内共通とも思える、モダンな屋根のついた真新しいホームがあるだけでした。

【滝駅-烏山駅間】
滝駅-烏山駅間(1)
滝駅-烏山駅間(2)
滝駅-烏山駅間(3)
【烏山駅進入】
烏山駅進入

 滝駅を発車して、右手に龍門の滝をちらと見たあと、最後の山越えに。そこを抜け、沿線に街並みが広がると、宝積寺駅を出てから約33分、定刻の15時22分に、烏山駅へと到着。その直前、運転席からは、「剛体架線区間に入ります。」という音声が聞こえてきました。

【烏山駅の駅舎】
烏山駅の駅舎
【烏山駅前】
烏山駅前

 で、約四半世紀ぶりの烏山駅は、構内から駅舎まで、ほんと、何から何まで変わっていて、「ここは何処」状態だったのですが、車内に残っていた、思ったよりも多い乗客の後に続いて降り、駅前広場から続く道を眺めれば、川魚を商うお店があったりして、かつて訪れた時のことを、少しだけ思い出すことが出来ました。

【烏山駅の駅名標】
烏山駅の駅名標
【充電中のパンタグラフと架線】
充電中のパンタグラフと架線
【烏山駅に停車中の宝積寺行き普通列車】
烏山駅に停車中の宝積寺行き普通列車
【車内のディスプレイ】
車内のディスプレイ
【EV-E300-1の車内】
EV-E300-1の車内

 烏山駅からは、乗ってきた列車の折返しとなる、15時38分発の宝積寺行き普通列車に。
 券売機で切符を買ってから再びホームへ入り、車両が剛体架線で充電しているところを見てから、先頭車に。
 そのうち、ホームに「夕焼け小焼けで日が暮れて」の曲が流れ暫くしてから定刻に。発車の際、電車の音がすることに、改めて烏山線は変わったことを感じます。
 それで車内は、私が乗った先頭車は9人、後ろはその半分以下という乗車率。乗客は、ビジネスマンっぽい人や、近所のおばさんっぽい人、そして男女のお年寄りと皆大人で、ぱっと見、学生さんっぽい人は乗っていませんでした。烏山にある高校の学生さんが乗るのは、この1本後なんですかね。

【仁井田駅-下野花岡駅間】
仁井田駅-下野花岡駅間

 ロングシートなので景色を堪能するのは難しいのですが、車窓からは、門が立派な農家住宅や、江川や荒川が造ったであろう段丘様の地形が、先頭部に立って見ていたときよりも良く見えます。
 そんな中、滝駅、小塙駅と乗り降りなしで発車したのですが、次の大金駅では、かなりの乗車。大人はもちろん、下校する中学生、小学生がたくさん乗り込みましたが、大人も子供も全て賑やかというか。女子中学生なんか、いっぱしの女性ばりに我が物顔で振る舞っています。
 そんな大金駅ですが、下り列車ではしなかった列車交換をこの列車では行うため、6分ほど停車してから発車。その頃には車内はやや落ち着いたような。
 鴻野山駅で小学生を全員降ろしてやや静かになった列車は、ところどころ、県道10号の旧道と並走。鉄道も道路の整備によって乗客を減らしましたが、道路のバイパスの開通によって交通量を減らし、以前に比べると僅かな交通量になっていますね。
 次の仁井田駅では、近くにある県立高根沢高校の学生さんで席が一気に埋まり、再び賑やかに。その頭越しに、那須や日光の山が見えますが、これは私が生まれて依頼慣れ親しんだ景色のアングル違いと行ったところ。ただ、ここから見る景色は新鮮に感じ、思わず席を立ってドアのところで写真を撮ってしまいました。
 下野花岡駅でも数人乗せた列車は、台地を登って再び宝積寺駅に。大部分の乗客が、東北本線の列車に乗り換えるようでした。

【宝積寺駅に到着した普通列車】
宝積寺駅に到着した普通列車

旅程等

旅程

宝 積 寺
 14:49
  |JR烏山線
  |333M
  |
 15:22
烏  山
 15:38
  |JR烏山線
  |336M
  |
 16:17
宝 積 寺

運賃等

JR運賃 宝積寺-烏山 420円
JR運賃 烏山-宝積寺 420円
(合計 840円)

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馬 たひお (@uma_tahio)
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栃木県のちょいと北の方に住んでいるアラフィフのオッサン。
ラーメン・そば・うどんなどの食べ歩き、乗り鉄、競馬の旅打ち、モータースポーツ観戦、PC自作など嗜んでいます。

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