たひお備忘録

趣味の活動記録。
【タイトル題字:細身のシャイボーイ様】

埼玉古墳群 【平成26年11月22日】

「史跡埼玉村古墳群」の石碑

 前の記事の忍城を見た後に向かったのが、埼玉(さきたま)古墳群。かねてから忍城を見る時は、石田三成公が行った水攻めの痕跡も合わせて見たいなぁ、と思っていたもので。それで石田三成公が本陣を置いたとされるのが、埼玉古墳群の中にある丸墓山という古墳。ただそれだけじゃ勿体ないので、ひととおり回ってみることにしました。


埼玉古墳群について

 当地は元々、利根川と荒川に挟まれた沼沢地だったのですが、そこに古墳群が築かれたのは5世紀末から7世紀にかけてと考えられています。 

 ただし、古墳の歴史的価値が広く認められ、保護の必要性が叫ばれるようになるのはだいぶ後世になってからの話で、もともと大型古墳の周囲には、陪臣の小型古墳が多数有ったのですが、昭和初期に周囲の沼地の干拓の為取り壊されてしまったそうで。

 そんな中、昭和13年に9基の大型古墳が国の史跡に指定。昭和41年(1966年)以降、整備事業が進められその一環で昭和43年(1968年)に稲荷山古墳から発掘された金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)は、刀身に象嵌で刻まれた銘文が、古代史を紐解くうえでの歴史的大発見となりました。

 昭和51年からは「さきたま風土記の丘(現:さきたま古墳公園)」として、さきたま史跡の博物館の整備や古民家の移築などが行われました。

実際に行ってみた

 冒頭にも書いたとおり、もともとは埼玉古墳群のなかにある丸墓山古墳がお目当てで、カーナビ代わりのスマホアプリに目的地を「丸墓山古墳」とセットしたところ、近くまでは来られたもののクルマを停められるような所もなく、また、そこから古墳に近づく道もなかったという感じで…。なので、改めてさきたま古墳公園の駐車場を目指して到着。ここから歩いて行くしかなさそうなのですが、ついでにひととおり回ってみることにしました。

【埼玉県立さきたま史跡の博物館】
埼玉県立さきたま史跡の博物館
 それでまず初めに訪れたのが、前述の金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)が展示されている、埼玉県立さきたま史跡の博物館。現物は腐食してボロボロになっているのですが、それでも、その存在感はすごいという感じがしました。また他の展示品もかなりの見応えがあったのですが、団体さんと鉢合わせしてしまって、ゆっくり見られなかったのがちょっと残念。もっとも、こればっかりは仕方がないんですがね。

 そして博物館を出て、ここからは、近いとこから古墳を一つ一つ見て回りました。

【瓦塚古墳】
瓦塚古墳
 博物館に一番近い=最初に見たのが、瓦塚古墳。全長73mの前方後円墳で、築造は6世紀前半頃と考えられているそうで。またかつては、埼玉古墳群の特徴である長方形で二重の周堀(しゅうぼり)に囲まれていて(現在は一部のみ砂利で復元)、墳丘や中堤には様々な種類の埴輪が並べられていたのですが、その中の円柱状の太い柱を表現した家形埴輪は全国的にも珍しいものとのこと。

【奥の山古墳】
奥の山古墳
 古墳群の南端にあるうちの1つが、奥の山古墳。台形の二重周堀を持つ全長66mの前方後円墳で、築造は6世紀中頃から後半にかけてと考えられています。また堀は水堀ではなく空堀だったとのこと。

【中の山古墳】
中の山古墳
 古墳群の南端にあるうちのもう1つが、中の山古墳。二重周堀(現在は完全に埋まっている)を持つ全長79mの前方後円墳で、築造は6世紀末から7世紀初めと考えられています。またここからは他の古墳のような埴輪ではなく、須恵質埴輪壺(すえしつはにわつぼ)という珍しい土器が出土したとのこと。

【鉄砲山古墳】
鉄砲山古墳
【鉄砲山古墳の石碑と石で出来た注意書き看板】
鉄砲山古墳の石碑と石で出来た注意書き看板
 元々この周りが忍藩の砲術練習場だったのでその名が付いた鉄砲山古墳。ちなみにそれ以前は、御風呂山(おふろやま)と呼ばれていたとのこと。二重周堀(現在は完全に埋まっている)を持つ全長109mの前方後円墳で、築造は6世紀後半と考えられています。またここには、「鉄砲山古墳」と掘られた古い石碑と、これまた古そうな石で出来た注意書き看板が残っていました。(これらもある意味史跡かと。)

【二子山古墳】
二子山古墳
【内堀に一部残っていた水】
内堀に一部残っていた水
 先の4つがあったエリアから、道路を渡って駐車場なんかがあるエリアに来て最初に見たのが、旧武蔵国最大の古墳である双子山古墳で、かつては観音寺山とも呼ばれていたそう。二重周堀を持つ全長138mの前方後円墳で、築造は6世紀初頭前後と考えられています。また同じ埼玉古墳群にある稲荷山古墳とは築造時期が近く、古墳の形状や向きも一緒と共通性があるとのこと。で、訪れた時は整備工事が行われている影響か内堀に水がほとんど無かったのですが、元々こちらの堀は空堀だったとのこと。

【将軍山古墳】
将軍山古墳
【将軍山古墳展示館】
将軍山古墳展示館
 古墳群の北東部にあって、墳丘に埴輪(の複製品)が並べられているのが将軍山古墳。長方形二重周堀を持つ全長90mの前方後円墳で、築造は6世紀後半と考えられています。また、墳丘東側が削平され、石室の一部が露出するなど崩壊の危険があったので墳丘と周堀の復原工事が行われたほか、古墳の内部に入って複製の石室や遺物の出土状況を見学できる将軍山古墳展示館も整備されました。で、ここ、穴場的面白さというか、古墳内部の状況がよくわかるのがとても興味深かったです。

【稲荷山古墳】
稲荷山古墳
【稲荷山古墳から見た将軍山古墳】
稲荷山古墳から見た将軍山古墳
 前述の金錯銘鉄剣が出土したのが、この稲荷山古墳。長方形二重周堀を持つ全長120mの前方後円墳で、築造は5世紀後半と、埼玉古墳群の中では一番最初に作られたと考えられています。また、昭和12年(1937年)に埋立用の土を取る為に前方部分が壊されてしまったのですが、平成9年(1997年)に復元整備されました。で、この稲荷山古墳は登ることが出来るのですが、墳丘の高さが11.7mあることもあって、なかなかの眺め。もっとも、このあたりで体力的にだいぶしんどくなってきていたので、「人は何故、古墳に登るのだろうか」などと、後から考えるとどうでも良い事を思いながら登ったのですが。

【丸墓山古墳】
丸墓山古墳
 今回一番のお目当ての、忍城水攻めの際に石田三成が本陣を置いたとされる丸墓山古墳。直径105mと日本最大級の円墳で、高さも18.9mと埼玉古墳群では一番高いです。その築造は6世紀前半と考えられているのですが、稲荷山古墳の後、双子山古墳と前後する時期に、それら2つと同じ前方後円墳ではなく巨大な円墳が作られた理由や、双子山古墳との関係性は謎だそう。ちなみに、ここも登れますが、「人は何故(以下略)」。

【愛宕山古墳】
愛宕山古墳
 最後に見たのが、埼玉古墳群の中で最も小さい、愛宕山古墳。長方形二重周堀を持つ全長53mの前方後円墳で、築造は6世紀前半と考えられています。

前玉(さきたま)神社

 愛宕山古墳でさきたま古墳公園内の古墳は全て見たことになるのですが、公園のすぐ近くにある前玉(さきたま)神社は、そのお社が古墳(浅間塚古墳)に建てられているというので、お参りついでに見学していくことに。ちなみにこの前玉神社。平安時代の延喜式神名帳にもその名が記されているという大変由緒のある神社だそうです。また、埼玉県の由来となった「さきたま」という地名も、元々はこの神社から取られた前玉が埼玉となったとのことです。

【大鳥居】
大鳥居
 古墳とは関係ないのですが、こちらの大鳥居は、延宝4年(1676年)に忍城主阿部正能家臣と忍領内の氏子達によって拘留されたもの。行田市の文化財に指定されています。

【神楽殿】
神楽殿
 境内には立派な神楽殿も。こういうのがある神社って、なにやら由緒を感じてしまいます。

【浅間塚古墳】
浅間塚古墳
 お社が写る罰当たりな写真になってしまったのですが、そのお社があるのが浅間塚古墳。堀を持つ直径約50mの円墳で、築造は7世紀前半頃と、埼玉古墳群では最後の頃に作られたと考えられています。

【万葉灯籠】
万葉灯籠
 お社のある頂上部に上る階段の登り口にある2基の石灯籠が、元禄10年(1697年)に当社の氏子が祈願成就を記念して奉納した万葉灯籠。万葉集に載る、当地に関する歌が一首ずつ記載されているので万葉灯籠と呼ばれているそうです。

感想とかまとめとか

 というわけで埼玉古墳群だったのですが、丸墓山以外はさらっと見るわけが、さきたま史跡の博物館の国宝を初めとする展示品や、これだけの規模の古墳が密集している様に心を奪われ、気が付くとガッツリと観て回ってしまいました。もっとも、(さきたま古墳公園は)敷地がたいそう広いので、かなり疲れたのも事実なんですが。それにしても、古墳って、見れば見るほど不思議というか、昔は沼沢地というか低湿地だった当地に、取り壊されてしまったものを含めもの凄い数の古墳が密集してあった景色って、一体どういうものだったんですかね。

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