趣味の活動記録。
【タイトル題字:細身のシャイボーイ様】
唐沢山城は、栃木県佐野市にある、連郭式の山城。関東七名城の一つに数えられ、また、後述の理由により関東一の山城とも呼ばれています。
その築城については、佐野市の公式ウェブサイトによると「築城の時期については、下野の藤姓足利氏が「佐野庄」を統治、鎌倉時代に入り佐野氏としての勢力を拡大しつつ、その後、群雄割拠の時代的背景の中、山城を築き上げていったものだと考えられています。」となっています。
ですが伝承では、平安時代となる延長5年(927年)、近江三上山の百足退治の伝説で有名な藤原秀郷が、下野国押領使を任じられて関東に下向した際、唐沢山に城を築いたのが始まりとされたり、その秀郷が、天慶3年(940年)に起きた天慶の乱での平将門討伐で功を上げた後に築城して以降、後に子孫は佐野氏を名乗り、代々城主を務めたとも。またこのほか、現地の案内図には、改築者として1200年頃に佐野成俊と1520年頃に佐野盛綱が?マーク付きで、1590年頃に佐野房綱とも書かれています。
で、その唐沢山城がフューチャーされるのが、戦国時代。佐野氏は元々古河公方に仕えていたのですが、時の第15代当主である佐野昌綱は、勢力を拡大してきた後北条氏の北条氏康に付きます。ですが、その後北条氏討伐に上杉謙信が関東侵攻してくると今度は上杉方に付き、永禄2年(1559年。永禄3年説もあり。)に北条氏政の大軍に攻められた時は謙信の援軍によって撃退に成功しました。(ただし、この戦が創作の可能性もあるとのこと。)しかしその後、色々あって謙信とは不仲となり、今度は謙信の攻撃を9回(8回?10回とも。)も受けることになますが、その間、和睦や一時的な降伏によって戦を収めたことはあるものの、唐沢山城は一度として落城を経験することはなく、その堅固さから「関東一の山城」と呼ばれるようになったそうで。
その後、佐野氏は天正15年(1587年)に北条氏康の息子を養子に迎え北条氏と和議を結びましたが、天正18年(1590年)豊臣秀吉による小田原征伐では豊臣方に付き、慶長5年(1600年)の関ヶ原の戦いでは時の第19代当主である佐野信吉は徳川家康方に付きと、激動の時代に存続し続け、その結果信吉は3万5千石の旧領を安堵され佐野藩の初代藩主となりました。
しかし慶長7年(1602年)、唐沢山の麓に佐野城(春日城)が築かることになり、慶長12年(1607年)唐沢山城は廃城になりました。その理由として諸説あるようなのですが、豊臣に縁のある大名が江戸の近くに堅固な山城を持っている事が、家康にとっては不都合だったみたいですね。ちなみに、佐野藩初代藩主の佐野信吉は、慶長19年(1614年)3月に江戸で起きた大火の際、江戸に急行し消火作業に活躍しましたが、逆に無断参府として幕府に咎められ、その後同年、実兄である伊予宇和島藩主の富田信高の改易に連座する形で改易となり、佐野藩は廃止。佐野城(春日城)も廃城となってしまいました。
やがて現代に入って明治16年(1883年)、本丸跡に藤原秀郷公を奉る唐沢山神社が建立。昭和30年(1965年)には栃木県立自然公園が開設されました。そして平成9年(1997年)からは田沼町(現在は佐野市に合併)による発掘調査が開始され、平成19年(2007年)からは佐野市による国指定史跡化に向けた発掘調査を実施。その成果が認められ、平成26年(2014年)に国指定史跡となりました。
【北関東道唐沢山城跡トンネル】
趣味の関係で、クルマで遠出する事が多いものだから、北関東自動車道が全通してから何度となく通った唐沢山城跡トンネル。で、今日もトンネルくぐって、唐沢山城最寄りの佐野田沼ICへ。そしてインターから10分少々で、唐沢山のだいぶ上のほうにあるレストハウス前の駐車場に到着しました。佐野市の公式ウェブサイトにある地図(以後「佐野市の地図」)によると、この辺りは蔵屋敷だったとのことで。
【ます形から見た喰違虎口】
駐車場からお城へは、喰違虎口を通って。東国の戦国期の城では珍しい石垣がいきなりお出迎えなのですが、これだけで、既にテンション上がってきました。
【天狗岩】
【天狗岩から見た景色】
虎口からすぐの所にあるのが、物見櫓があったという天狗岩。岩が突き出していることを天狗の鼻見立てたネーミングだそうで。で、そこからは、さすがに物見櫓があったと言うだけあって、城の南方向が良く見えました。
【大炊井(おおいのい)】
この辺りは西城域と呼ばれるエリアなのですが、そこにあるのが直径8mほどもある巨大な大炊井(おおいのい)。築城の際、厳島大明神に祈願したところ霊夢を見、そのとおりに井戸を掘ると、以後枯れることのない井戸となったそう。と、それはさておき、堅固な山城に豊かな水源は付きものだなぁ、と。
【組屋敷跡】
【根古屋神社跡】
大炊井の北側は小高い丘になっているのですが、そこには曲輪っぽい平地が何段か。現地の案内地図だと組屋敷、根古屋神社跡と書かれているところで現在は避来矢(ひらいし)山霊廟となっています。また、佐野市の地図では「避来矢山砦」と書かれているので、何らかの軍事施設があったんですかね。ちなみに避来矢(ひらいし)というのは、藤原秀郷公のムカデ退治の伝説に出てくる鎧(ムカデ退治のお礼に龍神から賜ったという伝承。)の名だそうで、その一部が現存しています。
【四つ目堀】
【四つ目堀に掛かる神橋】
西城域とそれより東を分けるのが、地図で見る限りこの城址でも規模が大きい四つ目堀(本丸から数えて4つ目の堀という意味っぽいです。)という空堀。昔はもっと深かったんでしょうね。で、今は大正~昭和初期?あたりに架けられた石造りの神橋という橋が架かっていますが、往時は、有事の際は引き上げることができる曳橋が架けられていたそうで。
【帯曲輪】
【三の丸の石垣】
神橋を渡って左手が、当時最大の防禦地であったという帯曲輪。周囲は低い土塁に囲まれていました。また、隣接する一段高い三の丸との間は山の斜面っぽいのですが、よく見ると埋もれそうな石垣がありました。
【三の丸】
帯曲輪の東隣の一段高いところにあるのが三の丸。この城の中では、最も広い曲輪でしょうか?で、賓客の応接間のあったそうなのですが、現在は綺麗に真っ平らになってます。(おかげで余計広々と見えるのかも。)
【二の丸】
【二の丸周囲の石垣】
【二の丸北側の虎口】
三の丸から直接行けない感じの二の丸なのですが、お城の北側の方から直接クルマで入ってこれるようで。で、お社がある他、舗装されているので神社の駐車場という感じも。ちなみに、かつては奥御殿直番の詰所があったそうで、その周囲は低い石垣に囲まれていました。
【本丸石垣】
二の丸から本丸に直接行ける階段もあるのですが、二の丸南側から出て本丸方向を見ると、何とも立派な高石垣が。この高い石垣が、唐沢山城跡のハイライトでしょうか。
【南局】
【南局と本丸の間の石垣】
本丸の南側には一段低くなっているところが有り、南局跡との看板が。現地の案内地図には引局、古地図には二の丸と書かれたものもあるそうなのですが、奥女中の詰め所があったらしいです。
【本丸】
【本丸を取り囲む石垣】
【二の丸からの出入口付近の巨石】
現在は唐沢山神社の本殿が建つ本丸。周囲には分厚い石垣がぐるりと巡らせてあり、さすがは本丸だな、と思いました。また、二の丸からの出入口付近の石垣にはとても大きな石が使われていました。
【南城】
【南城から見た景色】
現在神社の社務所が建っているのが南城と呼ばれる場所。昔は蔵屋敷や武者詰があったとのこと。で、ここからの景色がまた良く、この日は若干モヤってて見えなかったものの、コンディションが良ければスカイツリーや東京の高層ビル群も見えるそうです。
【南城から北に続く小径】
【車井戸】
南城から本丸東側に沿って北に向かう小径があるのですが、なんか良い雰囲気です。また、その途中には車井戸という25mほどの深さの井戸が有り、位置的に本丸付近の城内の重要な水源だったようで。
【武者詰】
【武者詰周囲の土塁】
【長門丸(お花畑)】
本丸の北側にあるのが、武者詰めと呼ばれる細長い曲輪と。周囲は土塁に囲まれています。そしてその西隣には、これまた土塁に囲まれた長門丸という曲輪が。今は弓道場となっていますが、かつては城で使用する薬草頭が栽培されていたと考えられています。
【長門丸と金ノ丸の間の堀切?】
【金ノ丸】
長門丸の西は、現在道路になっている堀切挟んで、かつて宝蔵があった金ノ丸という曲輪が。現在は、現地の案内地図にロッジと書かれた建物が建っています。で、この辺りから、山の稜線を削って曲輪にしたところが細く、小さくなっていく感じで、その間の堀切も深いです。
【杉曲輪】
【杉曲輪と北城の間の堀切】
【北城】
杉曲輪はかつて、栃木県唐沢青年自然の家があったところで、現在は更地になっています。そして堀切を挟んでその西が、北城と呼ばれる曲輪が。更にこの西にも山の尾根伝いに遺構が有る筈なのですが、今回はこれにて。
というわけで唐沢山城だったのですが、曲輪や土塁、そして特に、東国の戦国期のお城では珍しい石垣などなど、とても見所が多くて素晴らしいですね。お城に興味を持ち始めてあまり間もない私ですが、「(地元の)栃木県にもこんなにブラボーなお城の遺構が残っていたなんて!」と思った次第で。今回は、駐車場から本丸付近の美味しいところだけ見たような感じのですが、次にお伺いした時には、周辺に散在する遺構も、是非とも見て回りたいと思います。
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